＝ 独竜罪種 ヴァリザ ＝
・・・エピソードα 天竜岳・・・・・
・・・・・・・・・時は 現在20世紀初頭、 日本。
ソコは光と情報が進み 人の英知の栄えたる地
だが たとえ どのような時代に進もうと
人が神でない限り、光の当たらぬ場所、人の目に触れざる場所は存在し、
得てして ソコは 人ならざるものの舞台となる・・・
今 人の目の無き 夜の河原に対決するは まさに ソレである。
・・・・・・・・・
川の上流より 立つは 猛き龍人
人と同じ二本の腕と脚を持ち、人に無き角と尻尾を持つ罪種
その右拳は赤黒き血を滴らせ、その長き尾は右半分がえぐれ中の骨を覗かせている。
だが それでも ソレは臆することなく
闇をも貫く眼をもって 目の前の敵を射抜いていた
対して 下流に在スルは 岩の人もどき
人の同じ体を持ちながら、人の皮膚を持たぬモノ
そして その体にまとうは 鱗のごとき岩盤
青緑に鈍く光るその皮膚に 少しだけ 赤黒いものが付着している。
・・・・・・・・・
『どう〜したぁぁぁ ヴァリザァァァ〜 これでぇぇ おぉぉわぁぁぁりぃぃぃかぁぁぁ〜？』
岩ヒトモドキが オレに語りかけてくる。
その
その間延びした唸りは ヤツ元来の特徴なのか
あるいはヤツの余裕からくるものか
どちらにしても 妙に腹立たしい。ヤツの声も ソウさせてる俺自身も
『ならぁぁぁ オレが行くぅぅぅぅぅう・・・』
ダシュッ！！
！！
コトバの根が乾かぬうちに、ヤツの体が地を駆けた。
その動作は 岩の弾丸。
体格と口調にそぐわぬ俊敏で数メートルの間合いを 瞬時に縮め
そのまま 剛腕で オレの首をもぎ取らんとする
だが・・・
シュン！
『アァァァァ？』
オレは それを右にかわし、首筋に照準を定める
そう、早いといっても それは人間レベルでの話。
今のオレのほうが はるかに早い。あたるわけがないのだ
かわすのはわけない。 問題は---
ガキンッ！
『グゥ！？』
悲鳴を上げたのは俺のほうだった。
振り向きざまに繰り出した 俺のまわし蹴りが防がれる。
いや、先ほど言ったとおり スピードは オレがはるかに勝っている。
問題なのは ヤツの体を覆う鎧皮。
ふじつぼのようにッゴツゴツとした装甲は ヤツの最大の防具にして最大の武器
例えるならば 攻撃した相手を傷つける刃の鎧であった。
脚のツメは もろくも折れ、そのつま先が 醜くつぶれる。
先ほどの右拳と尾をあわせ ｌこれで3つの武器が使えなくなってしまった。
『ぐへへぇ〜〜 もぉろぉいぃ〜ぞぉぉ〜〜っ ヴァリザァァァーー』
やはり このままではラチが空かない
ヤツの表皮はダイヤかエメラルド・・・少なくとも オレのもつ どの部分よりも硬い
破壊は 絶対不可能・・・いや 方法ならば一つだけある だがそれはーーー
ガシッ！？
『つぅ〜かまえぇぇぇたぁぁぁ〜っ』
しまった！
ヤツは一瞬の判断の遅れた 俺の体に飛び込み
そのまま 腰に手を回して締め上げた。
そうこれは プロレスでいうところのベアハッグ
だが タダのベアハッグでない。
『すぅぅりぃぃ つぅぅぶぅぅすぅぅーーーっ！』
ゲリ・・・グジョッ！
――――――！！！！！？？？
俺の声にならない叫びがあたりを包む
ヤツの言うとおり 今オレの体に ヤツの岩肌が食い込み
オレの体は大根おろしのようにすりつぶされ 。
肉片が ヤツの表面にこびりついていくっ！
『グヘヘヘぇぇぇーーー』
その叫びに 満足したのだろう、
やつは 満足げな声を漏らし、その腕は更に力を増していく。
・・・だが コイツはミスを犯した。
離れていたので 見つけにくかった。動いていたので狙えなかったのだ。
今 コイツは完全に密着し、 しかも オレの腕と脚は完全に自由・・・
・・・ヤット、ネラエル・・・
ザクッ！！
「
『！？』
ベリッ！！
『ア、アアアガァァァーーーーーーッ！！』
今度は ヤツの悲鳴である。
せっかくつかんでいた俺を手放し 肩を 抑えるイワヒトモドキ
だが まぁ無理もない。
鎧のようにも岩のようにも見えるが ソレはあのヒトモドキの皮膚なのだ。
生きたまま皮をはがされるというのは おそらく体をすられるのと同じぐらいの痛みであろう。
『あ、ががが・・・ヴァリザァァアアアア・・・』
そう 全身をくまなく覆っている鎧にも 必ず弱点が存在する。
それは間接部の鎧の継ぎ目。
これがなければ鎧は動くことも出来ないタダの彫像になってしまう。
ならば 話は簡単だ。
ツメで鎧が壊せないのならば、
その鎧の継ぎ目にツメを入れて
そのまま 鎧をヒキハガセバヨイ・・・・
『よ・・・よぐもおおおぉぉーーーっ！』
イワヒトモドキ が猛烈な勢いで オレに迫る
ダガ もう問題ない。弱点は 既に明確。そして 俺の方が遥かに はやい。
ダカラ アトハ・・・
ザクッ！
『ガッ！？』
ソイツについてる生皮を スベテヒキハガシ・・・
ベリッ！ ベリッ！
『アアアアガァァァァァァアーーーーーーッ！』
・・・ムキダシノ ニクニ ツメヲ タテルダケ・・・・
ザク！！ベリッ！ ベリ！ バリッ！ ザク！バリリ！ベリ！！
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・・・・・・
そして 数分後・・・作業は終了した。
生き残りモノは タダソコにたっていた。
月は タダ静かに 彼の姿を照らし
湿りを帯びた涼風は 彼の火照ったの体を冷まし
河のせせらぎは 彼の心を癒す・・・
だが、それも 一時の話、
生き残りしモノは
やがて 自分の脚と腕の再生を確認すると、
ゆっくりと この場を立ち去った。
・・・一度だけ 彼は 先ほどの場所を振り返った。
そこでは スベテが終わった月光の下で
ヤツの琥珀色の甲羅だけが
淡く光り輝き続けていた。
・・・
【エピソードα ＦＩＮ】
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